きおくのきろく

フィクションとノンフィクションを混ぜて書いています

変わらない世界

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 新しい街に住み始めた
謡曲がスピーカーから流れる古い商店街があり、八百屋や惣菜屋、ラーメン屋やスナックの他に新しいチェーン店も点在する田舎育ちの私にとっては不思議な場所だ。新宿や高円寺へ延びる大きな道路にはひっきりなしに車を通過するが、人々はよく道端で話をしている。

大家の営むタオル店の4階に住み始めたのは昨日からだ。築年数はずいぶん古いらしく、エレヴェーダは無い。

引越しは思ったよりも着実に、あっさりと終わってしまった。

一人暮らしだし、無論部屋はまだ荷物の詰まったダンボールだらけだし、やる事は沢山あるけれど。

私の悪い癖は何かを期待しすぎることで、小さい頃から何かを期待しすぎては現実に落ち込み、落胆している。

私は多分今落ち込んでいるのだと思う。
もちろん、無事に事済み、怖いほどに何もかも上手くいっているのだが。

新しい街へ住処を移したら、世界が変わるかもしれない、そこまでは思っていなかった。だけれど、何かが変わるかもしれないと思っていた。

でも、何が変わっただろうか。
私は私のままだし、私を取り囲む人間関係も、何も変わらない。
変わったのは朝目覚めた時に知らない天井があり、知らない人々が行き交う道があるだけだ。

 

私はきっと、世界を変えることが出来ない。