きおくのきろく

フィクションとノンフィクションを混ぜて書いています

2017-01-01から1年間の記事一覧

変わらない世界

新しい街に住み始めた歌謡曲がスピーカーから流れる古い商店街があり、八百屋や惣菜屋、ラーメン屋やスナックの他に新しいチェーン店も点在する田舎育ちの私にとっては不思議な場所だ。新宿や高円寺へ延びる大きな道路にはひっきりなしに車を通過するが、人…

ピンク 時々 ミント

不動産契約が終わった後、私は三軒茶屋にいた。カフェ・ド・クリエのソルベージュミントチョコが期間限定で復活しているというので、足を運んでみたのだ。 しかし、三軒茶屋の店舗は既に閉店になっていて店らしきものは見当たらなかった。知らなかったとはいえ…

遠いあこがれ

https://youtu.be/qsjqeu6hjj4 職場のラジオで青葉市子が流れているのを聞いたのは初めての事だった。 (ムーミンのテーマソングのカバー曲である) 明言はしていないが、知り合いがかつて聞いていたかもしれない曲を聴くというのはどこか臨場感がある。 その…

胡瓜、ハム、チーズ、キャベツ

柄にもなくサンドウィッチなどを作ったので写真を撮った。 弁当を作る、というのが性にあわない私にとって昼休みはそれほど楽しいものではなかった。 材料といえば、もらいものの胡瓜、ハム、近所のドラッグストアの食品コーナーに売っているカットキャベツ…

ここではない何処か

今利用している電車は朝の通勤の混雑や遅延が酷く、仕事よりも移動がしんどいと感じていたこともあり、転居を決めた。 特に今住む場所に愛着など無かったし、住む理由も特に無かったつもりだった。 一つ心残りがあるとすれば、この多摩川の景色を見れなくな…

白昼夢のような帰省

ぼんやりとした頭を抱えながら始発電車に乗り、大宮を経由して実家に着いたのは朝の10時頃だった。 雨雲が広がって薄暗い空を見上げると、屋根の上にいる見知らぬ視線とぶつかった。 恐らく、隣家の猫なのだろう。じっとこちらを見下げ、動こうともしない。 …

麦と日曜日

半年ぶりに美容室へ行った夜に、友人のOさんと自由が丘へ行った。 日曜日の夜だというのに、道端には人がたくさんいて、昼間の酷暑は引くことなく、ぼんやりとした熱が街中を包んでいた。七夕の過ぎたあたり、随分と星の粒が映える夜だった。 軽くなった髪の…

外は夏蜜柑の匂い

随分ひどい夏風邪(夏と形容するにはまだ早すぎる気もするけれど)を引いてしまい、休みの間ずっと眠っていた。 幾分か喉の痛みは引いたし、熱もなかったけれど気持ちは弱っているらしく、体は鈍く重かった。 気がつけば日曜日の夕方になっていて、実家から…

シャボテン、ホワイトアスパラ、ブイヨンスゥプ

最近注目されているソルソファームという農園が実は私の家の近所にあり、バスを使って片道20分ほどだったので、先日10年ぶりに再会したOさんと行くことになった。 最初は二子玉川で、いわゆるプリミティヴなフレンチのランチを食べた。彼女は付け合せにパン…

白い夜の輪郭

「そのTシャツはダメ、ホラよく見て。ミシュランだから」 その棚に無造作に山積みになってあるTシャツは好きなものを着ていいと言ったのは先輩だった。適当に選んだだけなのだが、このTシャツに星でも付いているというのか?という私の疑問はさておき、モノク…

あと と あと

年が明けるので、日出を見に海へ行った。 朝4時の早朝は、全てが暗く、凍てついて眠っているようだった。 「外気-3℃だってさあ、最早冷凍庫だよ」 父は面白そうにそんな事を言った。昨日の紅白歌合戦がだいぶ前のことのように思えるほど、私は眠さで頭が働…