白い夜の輪郭
「そのTシャツはダメ、ホラよく見て。ミシュランだから」
その棚に無造作に山積みになってあるTシャツは好きなものを着ていいと言ったのは先輩だった。適当に選んだだけなのだが、このTシャツに星でも付いているというのか?という私の疑問はさておき、モノクロのミシュランマンは描かれたばかりの頃の作画で、こちらに不気味な笑みを讃えていた。
「ならいいです、めんどくさいので、裸で寝ます」
またそんなこと言って、と先輩は呆れた顔をしていた。
「裸で寝たら風邪をひくでしょ」
「じゃあ、どれを着ればいいんですか」
先輩は少し考えたあと自分の着ていた襟がハギレのようになっている白いトレーナーを脱いで私に向かって投げた。
「それを着なよ」
「先輩は裸ですか」
「僕はよく酔っ払って裸で寝とるからね」
先輩の痩せた白いからだは太い鎖骨や肋骨が少しずつ浮いていた。
見慣れない身体の輪郭に私は目を逸らした。私は先輩の言葉を無視しようか迷っていた。
「寝るんですか」
「寝るよ」
「へえ」
私が分厚いセーターや下着を脱いで先輩のトレーナーを着ている間、先輩はぼうっと宙を見上げていた。天井は木製で、木目にはいくつかの染みがあった。先輩のトレーナーは煙草の匂いがした。
「どこで?」
私が質問を投げかけると先輩は少し間を空けて自分が横たわるベットを叩いた。その顔はひどく意地悪そうな顔をしていた。ベッドのネジが軋みバウンドする音が深夜の部屋の酒臭い部屋の中に響いていた。